暮らしに馴染む丹波の履物、藁草履

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昭和初めの日本で、履物と言えば当たり前に使われていた「藁草履」。
藁が細かく丈夫に編みこまれ、日なたの良い香りと、履けば履くほど足なりになるその馴染みの良さが嬉しい履物です。

「今みたいにズック靴なんかあらへんだから。学校に行くのかってずっと藁草履やったわ」

そう語る面々は、柏原町南多田を拠点に活動する老人会「柏友会」のみなさん。
藁草履について知りたい、という私たちの想いを快く受け入れてくださった男女5人の方々でした。結婚を機に南多田に来たという人、もともと南多田で生まれ育った人、生まれた場所はそれぞれに違いますが、幼いころから家の仕事のお手伝いをしてきたという点ではみんな同じ記憶を共有していました。

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photo | 藁草履を教えてもらった場所、南多田公民館

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photo | 柏友会のみなさんと藁草履づくりに挑戦する編集部

「それが当たり前やと思っていたから。藁草履を編むのと、畑の手伝いと、子守と。子守がとにかく楽しかって、
子守させてもらえるところを探したりしてね」メンバーの一人、村上つや子さんは笑いながらそう話します。

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「でも、藁草履を編むのも、いやだと思ったことはなかった。それをしないと、自分の履くものもないわけだから」
そう穏やかに微笑みながら話す福田節子さん。

福田さんのご実家では家族の草履だけでなく、
余分に作った分を行商で売りに出たりもしていたそうです。
日常の履物は夏でも冬でも素足に藁草履だったと語る面々。
特に長い距離を通学していた村上さんの場合は、通学路の途中に地面がひどく濡れているところがあり、
その部分だけは別の、少し古びた藁草履をはくなど工夫して通学していたそうです。
細谷えみこさんは、小学校で遠足など遠出をする時は、遠足用に一足用意をしていたいう思いでがあるといいます。

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藁草履を編むのに適しているのは、うるち米よりももち米の藁。より粘り気があり丈夫で、編みやすいと言われています。また長い藁のほうがより編みやすいのですが、稲刈り機は藁の部分を短く裁断してしまうので、
藁草履を編む場合はその分だけ手刈りをします。

藁を二束作り、自然な動きで縄を綯っていく柏友原会の皆さんですが、手の平の付け根の部分をすりあわせ、よりをかけて縄にしていくのは慣れないものにはとても難しいもの。それでも、「やっぱり小さいころからやってるから。体が覚えてるんやねぇ」そういいながら、あっという間に細くて丈夫な縄ができてゆきます。

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photo | 縄を綯う様子

草履を編むときには、綯った縄である程度の形を作り、
それを編むための台にひっかけて互い違いに藁を組ませていきます。
編み台はそれぞれの家に受け継がれてきたものや、
ほかの人のを見てまねて作った手作りのものがほとんど。
両手を使いながら緩まないように、枠となっている縄が見えないように細かく編んでいきます。
それが、丈夫に編むためのコツなのだとか。

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photo | 鼻緒をつける様子

鼻緒を作るための藁は、枠のための縄とは逆向きに綯うそうです。
「昔はきれ(布)なんかあらへんだけど」そういいながら出してきた細い布を一緒に編み込むと、
鼻緒にアクセントが付きかわいらしい仕上がりになります。

編み初めに残しておいた藁を引いて最後に形を整えると、鼻緒を竹のへら状のものでしっかり固定して、出来上がり。
編むという工程で片足30分以上はかかります。ですが藁草履は、「編む」以前にも大変な手間がかけられています。
稲刈りした藁は「稲木(いなき)」にかけられ天日干しにし、それを一束にして髪の毛を梳くようにして「そぐり」ます。その後「てんころ」という特別な形をした木づちで一束一束、端から端まで丁寧に打つことで、縄は柔らかく、編みやすくなります。

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photo | 稲木に掛かる藁。丹波市春日町にて

編む前のひと手間を惜しまれず、目をしっかりつめて編み上げられた藁草履は履き心地もやわらかく、素足のかたちそのままに沿って大地を心地よく踏みしめます。足の裏に感じる、お日様の恵みと、頼りがいのある柔らかさ。そのまま散歩に出かけたくなるような足取りの軽さを感じます。

一通り藁草履づくりを終えて「懐かしいことをさせてもらったわ」と、そんな風に話す面々。「久しぶりやからできるかしら」と初めは話していたのにもかかわらず、自然と手が動いていました。幼い日々の「お手伝い」の積み重ね。当たり前に教えられてきた手仕事を今私たちがこうして受け取る機会を、改めてうれしく、ありがたく思うのでした。

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photo | 藁草履づくりを終えてゆっくりとしたひと時

interview / writing : Asako Saiki