あずき工房

azuki

丹波市春日町東中。
『大納言小豆発祥の地』と書かれた石碑が堂々と立つこの土地に、静かに細々とその命の力をつないできた「とっておきの小豆」がありました。

「小豆は解毒作用があるんやて。昔は一日と十五日は小豆を神様にお供えして自分たちも食べて健康的にすごしたということがあるの。小豆が自然に体に入っていくような、お母ちゃんが入れてあげるような習慣ができたらいいわね」そう語るのは「あずき工房柳田」の奥さん、柳田明子さん。

 

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食品の中にわずかずつ含まれる自然毒。小豆にはそれらを解毒し外に排出する作用があると古くから知られています。またお肌のトラブルを防ぐアントシアニン、利尿効果を高めてむくみを改善するサポニンなど、体のマイナートラブル改善に効果のある小豆は、今注目されている食材の一つでもあります。

「あずき工房柳田」にて明子さんとご主人の柳田隆雄さんが栽培しているのは古くからこの地に伝わる在来種、「黒さや大納言小豆」。より効率的により多く収穫できるものを求められる時代の中で、栽培地も限られ収穫にも手間のかかる「黒さや大納言小豆」は、生産者が激減。その中で本物の美味しさを知るおばあさんたちが、それでも自家用にと大切に育てて続けていたのでした。

隆雄さんと明子さんは、隆雄さんのお母さまが保管していたその種から、黒さやの栽培を復活させました。他と比べてひときわ赤みが強く粒も大きく、味の濃いその小豆は今、「幻の小豆」として注目され、各地から隆雄さん、明子さんの小豆工房へと足を運ぶ人が後を絶ちません。

 

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「ここの小豆はここで種を取って、ここで植えて、同じあずきができていく。種を取って植えて同じものが育つという、それが自然だと思う」
栽培や収穫が効率的に行えるよう品種改良をされた農作物の種では次の命は育たず、結局はまた新しい種を毎年購入することになってしまいます。この地で当たり前に命をつなぐ。命が、命を生み出す。そのようにして育ってきた在来種の農作物を豊富に使って、あずき工房柳田では予約制のランチも提供しているとのこと。

「こぼれ種ってね、面白いのよ。できた種を全部保存するんじゃなく、周りのはほっておくやん。そしたら勝手に地面に落ちてそれが勝手に生えてくる。草を引いたり肥料をやったりしなくてもちゃんと力を持って生えてくるからね。『今!』と思って芽を出した子が天気の加減であかんようになることもあるし、ぼちぼち芽を出した子がうまいこといったりとかそんなこともあるけど、自然に自分に一番合った時期に芽を出して育ってくれる」

自ら内在する生命の息吹を放つ食物の芽。それを「子」と表現する明子さんの感性に、長年幼稚園教諭を務めた経験と、その根底にある慈しみや優しさを見て取らずにいられません。あずき工房柳田で出会える食材たちはこのように、無理なく大切に育てられてきたのです。

 

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ランチやおはぎ、ぜんざいなどをゆったりとしたお座敷で味わいながら、隆雄さん、明子さんとの会話も一緒に楽しむ緩やかなひと時。その帰りには、小豆、羊羹、小豆味噌などをお土産にする人も多いそうです。
黒さや大納言小豆の煮方は通常の小豆とは少し異なります。明子さんが隆雄さんのお母さまに教わったそのレシピも一緒に持ち帰ることができます。

 

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「黒さやを残していきたい思いはある。けど無理に作った後継者では続かない。こんなよい小豆がここにあるんやと自分で感じて、これは残さなあかんと自発的に思う若い世代の人との出会いがあればと望んでいる」

そう熱く語る隆雄さんの思い。その肩肘を張らない意気込みはどこか、明子さんの姿勢と通じるものがあります。決してアクセスに便利だとは言えない土地でそれでも多くの人がこのあずき工房柳田を愛してやまないのは、お二人の柔らかい雰囲気に、自分たちも「ありのままの命」で居ることを許された気持ちになるからかもしれません。

 

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あずき工房
<INFORMATION>
WEB SITE |http://www.kurosaya.jp
電話番号/ 0795-75-1249
兵庫県丹波市春日町東中1425
駐車場/ あり
定休日/ 不定休(お問い合わせください)
ランチ予約制

interview / writing : asako saiki